「今後の選択肢がひとつ増えました。楽しみです」
昨年のキーンランドC(G3)をレイハリアで制した亀田温心騎手は、レース後にそうコメントした。この勝利でスプリンターズS(G1)への優先出走権を手にした同馬は、前走の葵S(重賞)に続く重賞連勝を決め、いよいよ大舞台へ弾みをつけた。
しかし、レース後に陣営が下した決断は「スプリンターズSは使わない」という意外なものだった。勢いがあっただけに残念だったが、亀田騎手のスプリンターズS初出走は幻と消えた。その後、一息入れて復帰戦に選んだ京阪杯(G3)では、2番人気に支持されながらも、結果は16着とまさかの最下位。全ては仕切り直しという状況に陥った。
そんな亀田騎手が新たな「相棒」エーポス(牝5、栗東・北出成人厩舎)と、30日(日)に中京競馬場で行われるシルクロードS(G3)に出走する。春のスプリントG1・高松宮記念(G1)へ向け、重要なステップレースとなっている。
3冠牝馬デアリングタクトと同世代のエーポスは、3歳時にはフィリーズレビュー(G2)を勝ち、桜花賞(G1)への出走も果たした。その後は、休養を挟みながら使われていたが、重賞で結果を残すことは出来なかった。
7カ月ぶりの実戦となった前走のラピスラズリS(L)では、初の1200m、乗り替わり、長期休養明け、馬体重プラス14キロと克服すべき課題が多かったようにも映ったが、ファンは1番人気に支持した。
1枠2番からのスタートでは、やや遅れ気味にも見えたが、二の足の速さですぐさまカバーし中団まで押し上げる。スプリントの早い流れにも動じることなく、道中はじっくりと内で脚を溜めた。手応え十分で迎えた最後の直線では、一瞬前が開かない状況にも見えたが、進路が空いた隙間を縫うように伸び、豪快な末脚で差し切った。
「1200mは良いと思っていました」(『ラジオNIKKEI』より引用)とレース後にコメントした亀田騎手。初のスプリント戦を勝利で飾り、新たな一面を見せた。
過去の戦績からも、馬券内に好走する時は必ず勝利している親孝行ぶりだ。決め手は屈指のものがあり、このメンバーに混ざっても引けは取らない。
前走に引き続き騎乗する亀田騎手は、昨年のレイハリアでの重賞2勝をはじめ、短距離戦に強い騎手という印象が、競馬ファンの間では板についてきている。事実、昨年の同騎手の芝レースにおける成績を見ると、唯一単複ともに回収率で100%を超えているのが1200mだ。人気に関わらず、勝負強さを発揮している。
26日(水)の直前追い切りでは、亀田騎手を背に栗東坂路で4ハロン52秒8-11秒9を単走でマーク。ラスト11秒台という抜群の切れを見せても「息遣いもケロッとしていたし、具合はいいと思います」(『日刊スポーツ』より引用)と鞍上も舌を巻いた。
今年の重賞では、同期の斎藤新騎手がレッドガランで中山金杯(G3)を、菅原明良騎手がオニャンコポンで京成杯(G3)を制しており、負けられない想いがあるはずだ。新しい「相棒」エーポスと共に高松宮記念へ向け内容が求められる一戦だ。注目したい。
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